新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第29話 決戦!第壱中学校(前編)


 2月12日の金曜日,アスカ達のクラスに,転校生がやって来た。男2人に女4人だっ た。うち4人−最初に紹介される4人−がジャッジマンの組織の人間である。しかも,全 員が他支部のチルドレン候補生であった。 「喜べ〜,男子,そして女子。転校生が大勢来たわよ〜。」 ミサトは,6人もの転校生が来たので,ウキウキしているようだ。これで,当分の間,話 題には事欠かないだろう。 「はい,じゃあ,皆さん,順番にあいさつしてね〜。」 ミサトに促されて,転校生達は次々とあいさつした。 「アリオスです。よろしく!ワシントンから来ました。」 アリオスは,アメリカ支部から来た。蒼い瞳で茶髪,長身だが体格のがっちりとした白人 の少年だった。ハキハキとした感じで,好感が持てる。実は,トウジのガード役である。 「マックスといいます。ブラジリアから来ました。皆さん,よろしくお願いします。僕の 母は日本人なので,日本語はばっちりです。」 マックスは,ブラジル支部から来た。線の細い優男で,メガネをかけている。黒い瞳に青 い髪で,一見すると白人に見える。シンジのガードが担当だ。 「ミリアだ。ブラジリアから来た。よろしく頼む。日本語は得意ではない。以上。」 ミリアも,ブラジル支部から来た。標準よりもやや大きめの体格で,蒼い瞳に緑の髪で, 白い肌をしている。ややキツイ目付きではあったが,転校生の中では,一番の美人だった。 アスカのガードが担当だ。 「キャシーです。マサチューセッツから来ました。皆さん,よろしくね。」 キャシーは,アメリカ第3支部から来た。蒼い瞳に短い金髪,スリムな白人の少女だった。 活発な感じで,大きなメガネをかけており,美人とは言えないが,スタイルの良さと優し い感じの笑顔がそれをカバーして余りある。アスカの髪を短くして,金髪に染めて,メガ ネをかけたような感じだ。アスカとジャッジマンとの連絡が主な任務だ。 「ハウレーン・プロヴァンスだ。パリから来た。よろしく頼む。」 ハウレーンは,フランス支部から来た。蒼い瞳にピンクの髪,長身でスリムな白人の少女 だ。ミリアほどではないが,目付きが鋭い。美人度はミリアよりも劣るが,格好良いお姉 様という感じで,女性からの人気も出そうだ。ハウレーンは,フランスの傭兵組織,ヴァ ンテアンとネルフの連絡役だ。 「マリア・カスタードですっ。ハンブルグから来ました。皆さん,よろしくね。」 マリアは,ドイツ第2支部から来た。蒼い瞳に青い髪の白人の少女だった。体型は標準並。 大人しそうな感じで,決して美人とは言えないが,人懐こい笑顔が印象の少女だ。 マリアは,ドイツの傭兵組織,ワイルドウルフとネルフの連絡役だ。アスカとも顔見知り で,加持の女性関係を調べる手伝いをしたこともある。アスカはその時のつてで,マリア を通じてワイルドウルフと連絡を取っていた。 男子生徒の人気は,ミリアとハウレーンに分散し,女子生徒の人気も,アリオスとマック スに分散した。なお,ハウレーンは,一部女子生徒に人気を博した。 こうして,アスカ達は,新たな仲間を迎えたのだった。 転校生達は,休み時間になると,周りから質問攻めにあっていた。特に男子生徒は,ミ リアとハウレーンに,女子生徒は,アリオスとマックス群がっていた。そして,マリアと キャシーは,アスカの側に来ていた。 「お久しぶりね,マリア。例の件,ありがとう。助かったわ。」 例の件とは,ワイルドウルフと話をつけるのに,マリアの助けを借りたことである。 「いいえ,どういたしまして。アスカ,お久しぶりね。」 マリアはそう言うと,にっこりと微笑む。 「それに,キャシーね。会うのは初めてよね。」 アスカは,今度はキャシーの方へ話しかけた。 「そうね。初めまして,アスカさん。」 「アスカでいいわ。そうね,とりあえず,皆に紹介しようかしら。」 アスカは,シンジ達を呼び寄せた。 「みんな,聞いて。こっちの青い髪の方がマリア・カスタード。アタシがドイツに居た時 からの友人で,趣味は機械いじりとパソコンっていう,ちょっと変わった趣味だけど,優 しくて良い娘よ。」 「マリア・カスタードです。よろしくお願いします。」 「こっちが,キャシーよ。最近ネルフと手を結んだ組織の,連絡員なの。見かけは優しそ うだけど,喧嘩はアタシと同じ位強いと思って良いわよ。多分だけどね。」 「キャシーです。皆さん,よろしくね。でも,アスカさんって,喧嘩が弱いのね。私と同 じ位だなんて,弱いってことでしょ。」 「まあ,そういうことにしとくわ。じゃあ,こっち側ね。この大人しくて優しそうなのが 碇シンジ,アタシのフィアンセよ。」 「碇シンジです。よろしくお願いします。」 「で,こっちがアタシの親友で,料理が上手な洞木ヒカリよ。」 「洞木ヒカリです。仲良くしましょうね。」 「こっちが,ヒカリの恋人で,シンジと仲の良い,鈴原トウジ。」 「鈴原トウジや,よろしゅう頼むわ。」 「最後が,アタシの下僕で,写真好きでミリタリーオタクの相田ケンスケ。」 「相田ケンスケです。よろしくお願いします。」 「じゃあ,シンジ。アタシ達,女4人でちょっと一回りしてくるわ。」 そう言うと,アスカとヒカリは,教室の外へ出て,マリアとキャシーを連れ出した。そし て簡単に校舎内を案内した。 *** さて,お昼はいつものメンバーに加えて,マリアがいた。ちなみに,他の転校生達は,ハ ウレーンを除いて,固まって食べていた。ハウレーンは,お姉様好きの女子生徒に囲まれ て,お昼ご飯を食べていた。 「ユキ,こちらが,マリア・カスタードよ。」 「初めまして。マリア・カスタードです。よろしくお願いします。」 「で,こっちが,森川雪。アタシの仲の良い友達なの。」 「初めまして。森川雪です。ユキって呼んでください。」 「じゃあ,私もマリアって呼んでね。」 こうして,マリアはアスカ達のグループの中に,違和感無く溶け込んでいった。 お昼ご飯を食べ終わると,キャシーが転校生達を引き連れてやって来た。そして,初対面 の者もいるため,お互いに一通りあいさつをしていった。 アスカのグループが6人+マリアで,キャシーのグループが男2人,女5人に女教師2人 の計9人であったため,大人数でのあいさつになってしまった。 なお,ここは一応学校であるため,滅多な話が出来ないということで,続きはネルフ内で ということになった。もっとも,それは表向きの理由で,きな臭い話をヒカリとユキには 聞かせたくないというアスカの思いやりであった。 ここで,ケンスケにとって嬉しい出来事が起きた。何の気まぐれか,アスカはケンスケに 皆の写真を撮るようにと言ったのだ。ケンスケは,ニコニコしながら皆の写真を撮りまく っていった。 *** 放課後になると,アスカ達はネルフへと向かった。他のクラスは,明日の文化祭の準備で 大忙しだったが,アスカ達のクラスは昨日の試写会の時点で,準備は全て終わっていたた め,特にやることが無いのだ。 ポスター貼りなども,全部外注したため,生徒のやることは殆ど無かった。映画の上映会 場となる体育館の飾りつけを月曜日から皆で放課後にやる位ですんでいたのだ。今日も, 飾りつけが好きな者が10人位居残りする予定だったが,それも夕方までの話である。 ネルフに入ると,アスカはあらかじめ予約していた会議室へと向かった。そして,今後予 測される事態について,説明を始めた。 明日と明後日の文化祭で,エヴァンゲリオンと使徒を題材にした映画を上映する。その中 で,ゼーレの存在についても,暴露することになる。このため,早ければ日曜日にゼーレ の手が伸びてくる可能性がある。 その時,真っ先に狙われる可能性があるのが,エヴァンゲリオンのパイロットであるシン ジとトウジである。アスカもシンジのフィアンセということで,狙われる可能性が高い。 また,3人の周りの人物も狙われる可能性がある。 それを防ぐには,今のネルフの陣容では心もとない。そこで,ジャッジマンやレッドアタ ッカーズ,ワイルドウルフの力を借りて,ガードする必要がある。 基本的には,ワイルドウルフの2名が側でガードし,レッドアタッカーズの2名がやや離 れて守る。それに加えて,学校ではジャッジマンの部下が3人をマンツーマンでガードし, 女教師2名はミサトとリツコをガードする。 守る対象は,アスカ,シンジ,トウジの3人と,その家族・友人である。具体的には,ミ サト,リツコ,加持,ヒカリ及びその姉妹,ユキ及びその弟妹,トウジの妹,ケンスケの 計14人だ。 このため,ガードする人間は,56人+5人にその交代要員を合せ,100人以上にもな る。だから,組織の枠を超えて連携を取る必要があるのだ。 また,それ以外にも,ゼーレが何らかの破壊工作を仕掛けてくる可能性があるので,これ にも対処する必要がある。 また,最終的には,ゼーレが再度軍事侵攻してくる可能性が高い。その時は,最小限の人 員のみガードに当たり,それ以外は敵の軍事組織と交戦することになる。侵攻時期につい ては,概ね1カ月以内と予想される。 したがって,遅くとも3月一杯がガードする期限となるはずであるから,その間は気を引 き締めてほしいこと。 以上のことを,アスカは皆に説明した。 「質問は,何かある?」 アスカが最後に質問の時間を取ったところ,キャシーが尋ねてきた。 「あの〜,鈴原君の妹って,話を聞いていないんですけど。確か,ガードの対象は13人 だと聞いていますが…。」 それを聞いたアスカは驚いた。 「え〜っ。じゃあ,鈴原の妹って,誰もガードに付いていないの?」 「そうなるかしら。」 「あっちゃあ〜。どこで漏れたのかなあ。いいわ。今からでもいいから,ガードをつけて ね。ほら,今すぐに電話して。マリアもお願いね。」 アスカに急かされて,キャシーとマリアは,それぞれの組織に電話して,至急鈴原の妹に もガードを付けるように要請した。それが終わったのを見計らって,アスカが尋ねた。 「あなた達,加持さんとも打ち合わせをしたんでしょ?」 「ええ。でも,加持さんは,ガードの対象は13人だって言っていたそうですけど…。」 キャシーは言いよどむ。 「まったく,加持さんたら,しょうがないわねえ。これから,その手の打ち合わせには, シンジも参加させようかしら。」 アスカは,そう言ってシンジを見たら,シンジはしっかりと頷いていた。 「じゃあ,これからは,そういうことで,よろしくね。後,他に質問はあるかしら。」 アスカが尋ねたが,皆飲み込みが早いのか,もう質問は出なかった。 「じゃあ,良いわね。ガードは既に始まっているわ。ワイルドウルフは先週の金曜日から だけどね。じゃあ,よろしくお願いするわね。明日からは,いつ戦争になってもおかしく ないから。」 その言葉を最後に,皆解散した。 ***  翌日,アスカはシンジ,ヒカリ,ユキ,トウジ,ケンスケらと一緒にマンションを出た。 現在,ヒカリとその姉妹は,アスカと同じマンションに住んでいる。ケンスケも同じだ。 ヒカリもケンスケも親が仕事で忙しいため,帰りが遅いことから,アスカがマンション内 に部屋を用意するように取り計らったのだ。 表の理由は,映画製作に便利ということがあったが,裏の理由としては,ガードしやすい ということがあった。ガードする対象が散らばると,それだけガードする人間も散らばる ため,効率が悪くなるのだ。 このため,ガードの対象となる人物は,ユキを除いて,全員このマンションに住んでいる。 なお,人数が多いため,朝食は分かれて食べている。アスカ達の家にはユキとケンスケが 来て食べており,ヒカリの部屋にはその他のメンバーが集まって食べている。これも,ヒ カリとトウジを一緒にというアスカの思いやりと,お料理上手なユキとヒカリを分けると いう,現実的な必要性から来たものだ。 もっとも,シンジも料理が得意なのだが,最近はユキにやってもらい,シンジが料理する 機会はぐっと減った。シンジの負担をなるべく減らしたいというアスカの考えで,料理は ユキが殆どやっている。シンジが料理するのは,休日位である。 ユキも,アスカ達の食べるものを料理出来ることは嬉しく,かつ,アスカからもらうアル バイト料が結構高額なので,かなりユキの家計は助かっていたりする。 「行ってきま〜す。」 皆が声を揃えて言うと,リツコとミサトも 「行ってらっしゃい。」 と言って送り出した。リツコ達は車通勤であるため,少し遅く家を出る。 家を出ると,最初は,アスカとシンジ,ヒカリとトウジ,ユキとケンスケがそれぞれペア になって歩いていく。そして,人通りが増えてくると,女同士と男同士に分かれるのだ。 「あれ見てよ。映画のポスターが張ってあるよ。」 シンジの言葉に,皆歩みを止めて見ると,ネルフの制服に身を包んだアスカが,手を腰に 当てて立っているポスターが見えた。その横には,ヒカリ,レイ,ミサト,リツコも立っ ている。背景には,3体のエヴァが並んで映っている。 「何じゃこりゃあ。男が映ってないんか。」 「むさ苦しい男は,必要ないのよ。この方が客が集まるのよ。」 これには,ヒカリとユキも頷いたため,男性陣には返す言葉は無かった。 *** 初日は,10時から映画上映を始める。次は12時から,14時から,16時から,合計 4回の上映である。 「相田,準備はいいわね。」 「ああ,惣流,大丈夫さ。昨日も確認したから,OKさ。」 ケンスケは胸を張る。この映画は,ケンスケにとって,監督処女作になるため,かける意 気込みも半端ではない。アスカから資金面は心配ないと言われていたため,高額な機材を 惜しげも無く使っているのだ。 特に音声関係はお金をかけた。スピーカーも高性能なものを通常の映画館よりも多く用意 した。どの席に座っても,臨場感溢れるサウンドが聞こえるようにだ。 椅子もゆったりとした物を選んだ。このため,パイプ椅子なら1000人近く座れる広さ がある体育館であったが,500人位しか座ることが出来なかった。 心配された観客だが,予想以上の人出で,第壱中学校生徒は後日見られるからという理由 で外部の人間を優先したにもかかわらず,第1回目の上映から満席となった。あぶれた人 には整理券を配って,次回上映の10分前に集合するように伝えた。 *** 「ふふふっ,大成功ね。」 アスカは,得意気に言った。結局,第2回目の上映時に長蛇の列が出来たため,立ち見も 可にして,700人位詰め込んだのだが,それでも客をさばけず,18時と20時の2回 も追加上映をしたのだ。 「良かったね,アスカ。今日は満員御礼だね。」 シンジも,アスカが喜んでいるのを見て,嬉しそうだ。だが,二人で良い雰囲気だったが, 邪魔が入った。ミサトである。 「ちょっと,アスカったら,こっちに来なさいよ。シンちゃんもよ。」 「は〜い。」 二人は元気よく返事をして,リビングへと戻った。今日は,マコトの誕生日なので,簡単 なパーティーを開くのだ。もう,19時近い。間もなく主役のマコトが,ネルフから直接 来ることになっている。 いつものメンバー以外に,シゲルやマヤも呼んでいた。一方,ケンスケだけは,映画の上 映回数が増えたため,まだ学校にいる。それ以外のメンバーは,16時の回が始まったら 切り上げて家に戻っていた。 アスカとシンジは,学校でも家でもパソコンにかじりついていたが,ようやく一息つくこ とになる。 「さあて,ヒカリとユキが作った,おいしい料理を食べましょうか。」 そう言うと,お腹がキューと可愛く鳴ったため,アスカの顔は真っ赤になった。 (きゃっ,恥ずかしい。シンジに聞こえちゃったかなあ。もお,やだっ。) アスカは,シンジの顔をまともに見ることが出来なかった。 ***  その夜,文化祭初日の映画上映が終わった後,第壱中学校の明かりは全て消え,静寂が 支配していた。その中を音もなく進んでいく集団がいた。 その集団は,10人位であろうか。上はセーターにジャンパー,下はジーパンという格好 であった。それが1人のリーダーの指図で,学校内の1カ所を目指していた。 「プシューン。」 静寂を破るかすかな音がしたかと思うと,男達はさっと散開した。1人だけ,地に伏して いたが,ある者は校舎の影へ,ある者は車の影へと身を隠した。 「プシューン,プシューン。」 あちこちで,かすかな音がして,その度に男達の数は減っていった。最後の男が倒れるの に,ものの10分もかからなかった。 「ふん,あっけないな。」 校舎の影の中から,一人の少年が現れた。レッドウルフである。 「こいつらをアジトに連れて行け。洗いざらい喋らせるんだ。」 レッドウルフは,部下達に指示を与えると,再び闇の中に消えていった。 そう,中学校に潜入して捕まったのは,ゼーレの工作員達である。映画のことを察知して, 妨害工作を仕掛けようとしていたのだ。さすがにゼーレと言うべきか,他の組織が市内に 入る前に撃退されるのに対して,ゼーレの工作員達は,市内に易々と侵入してきたのだ。 既に,この中学校も戦場と化そうとしていた。 (第29.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  第3部で活躍する(?)予定のチルドレン候補生達を出しました。一気に出すと,名前 を覚えきれないと思い,小出しにすることにしたのです。でも,これっきり二度と出て来 ないキャラもでるかもしれませんが…。   一方,映画上映と共に,シンジの通う中学校もゼーレの侵入を許してしまいます。これ にネルフはどう対抗していくのか。最近,良いとこ無しのシンジに活躍の場面はあるので しょうか。 2002.3.17  written by red-x



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