新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第4.5話 ラッキ−デー


 シンジは、一度は寝ようとしたが、寝付けずに起きてしまった。今日一日で色々あった せいだろう。 「今日は、色々なことがあって疲れちゃったなあ。」 シンジは、一人呟いた。  今日のシンジは、朝早くからアスカを病院に迎えに行き、アスカを支えながらへとへと になって家に戻ったら、直ぐにネルフ本部まで呼びだされた。ネルフへ行ったら、記者会 見に駆り出され、それが終わったら、マヤの所へ寄ってアスカに渡す書類やらを受け取り、 帰りもアスカを支えながら帰って来たのだ。  帰ったら、アスカが『お腹空いた、お腹空いた。シンジ、早くご飯作ってよ〜。』と急 かすので、ろくに休めずに晩ご飯の準備をしていたら、さらにアスカの『シンジ〜。その 前にお風呂お願いね〜。』などと言われ、『シンジ〜。お風呂まだ〜。』などと急かされ て、とてもじゃないが、休む暇もなく、こき使われたのだから無理もない。 「でも、その後は、いいことが続いたよね。」 シンジは思い出しながらニコニコする。  最初は、アスカが、『シンジ〜。こっちにきて〜。』などと言うものだから、またこき 使われると思いつつ、反論しても怒らせるだけだと考え直し、いやいや言う通りにした。 だが、アスカは、『シンジ、小さいタオルを2枚持ってきて。』『…アンタのでもいいわ。 とにかく、直ぐに持ってきて。』『ありがと。ちょっとあっち向いて待ってて。』『いい わよ、こっち向いて。』などと次々に言いながら、最後は胸と腰にタオルが巻いてある以 外は、裸になってしまったのだ。シンジにしてみれば、生唾ものである。思わず前かがみ になってしまった。リツコがいれば『無様ね。』と言ったに違いない。だが、シンジも普 通の男の子。女の子の裸に興味があるし、見たいなとも思うのだ。ましてや、アスカみた いな美少女ならば尚更だ。シンジは思わず『何て綺麗なんだ。』と言う所だった。  だが、そこは小心者のシンジ。アスカに気兼ねして『目を閉じているよ。』と言った。 だが、何故かアスカは怒りだしたのだ。シンジは、結局、目を開いたまま、アスカを持ち 上げて風呂に運んだ。もちろんキッチンに戻る時は、顔はにやけっぱなしである。 しかし、シンジの幸運はそれで終わりではなく、さらなる幸運が待ち受けていた。なん と、アスカはお風呂でのぼせてしまったのである。そして、『体を拭けそうにないの。』 『シンジはアタシの体を拭くなんていやだよね。』と言うのだ。暗にシンジに体を拭けと 言っていた。  シンジは、あまりの幸運に恐ろしくなり、思わず断ろうとしたが、アスカが悲しそうな 顔をしているのに気がついて、アスカの言う通りにしたのだ。だが、結果的には、これが うまくいった。下手に断っていたら、アスカの機嫌を損ねていただろうし、いい目も見れ なかっただろう。下手をすれば、暫く口も聞いてくれなかったかもしれない。 (やっぱり、断らなくて良かったなあ。) シンジはその時のことを思い出し、ニコニコしていた。シンジの生涯で最良の日が来たの だから、無理もない。彼女いない歴14年、女の子の裸なんて、雑誌やビデオなんかでし か見たことがなかったのに、今日は目の前で、ナマで、モロに見てしまったのだ。実際は、 風呂でマナの裸を見たり、病院で上半身裸のアスカを見たことがあるが、チラリだったり、 精神状態が不安定だったりで、しっかりと見たのは、今回が初めてだったのだ。  しかも、シンジの幸運は続く。風呂場での紳士的な態度にすっかり安心したアスカは、 シンジに下着を着せることまでお願いしてきたのだ。シンジが内心で飛び上がらんばかり に喜んだのは言うまでもない。ここで、シンジは悪戦苦闘するフリをして、普段は決して 見ることができない所を中心に、しっかり目に焼き付けていた。アスカはのぼせて頭が朦 朧としていたらしく、全く気付いた様子はない。シンジの作戦勝ちである。これで、当分 の間、オカズに困ることはないだろう。 (アスカの裸、本当に綺麗だったな。夢じゃないよね。本当だよね。) シンジは未だに夢心地である。シンジは、あまりの幸運に夢か幻かとも思ったのだ。しか も、信じられないことに、アスカにお礼まで言われたのだから、疑うのも無理はない。 (裸を見せてもらって、お礼まで言われるなんて、僕は何て幸運なんだろう。やっぱり、 今のアスカは、おかしいな。明日になったら元に戻っていたりして。あはは。今日一日 はラッキ−デ−で、明日は元に戻ったりして。) あくまで心配性のシンジであった。 (しかも、明日も頼まれたんだよね。) そうだ、明日も同じことをするように頼まれたのだ。こんなに幸運が続くと、ほっぺたを つねりたくなるシンジであった。 (でも、こんなことになるなんて、ついこの間までは考えられないよね。) シンジはアスカとの出会いから順に思い出していった。初めて会った軍艦の上、一緒にシ ンクロして倒した第6使徒、ユニゾンの訓練、マグマの中で死にそうになったアスカ、レ イとアスカと3人で倒した第9使徒、死を覚悟した第10使徒、N2爆弾から守ってくれ たアスカ、マナの代わりになってもいいと言ってくれたアスカ、第14使徒に無残に敗れ たアスカ、第15使徒に心を攻撃されたアスカ、廃人のようになったアスカ、敵のエヴァ に蹂躙されたアスカ、サ−ドインパクト後に隣にいたアスカ、昨日やっと目覚めたアスカ。 シンジの脳裏に浮かぶアスカは、時には強く激しく、時には弱かったが、優しいアスカは あまり記憶にない。 (よし、明日は紳士に徹しよう。これでアスカの信頼を得られたら、アスカの裸が毎日見 られるんだ。しかも、アスカに喜んでもらえる。もしかしたら、アスカが素直になってく れるかもしれない。こんなチャンスを逃がしちゃ駄目だ。) シンジは、決意を新たにしながら、ゆっくりと眠りに着いた。 (第5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2001.10.8  written by red-x



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